10月22日、山梨県が生まれ変わる?『TGC FES YAMANASHI 2022』が開催決定!

有名イベントが山梨県で開かれることに。
なぜ? 
開催決定に至るまでのストーリーを追った。

イベント機にバカ売れ商品も

 来場者、オンライン視聴者を合わせた1日の総体感人数は延べ800万人以上。SNSでの拡散数はおよそ18億imp(インプレッション=SNSでユーザーのタイムラインに投稿が表示された回数)という、驚異的な数字を叩き出す東京ガールズコレクション(TGC)。

 TGCは「リアルクローズ」をテーマに、10〜20代の女性が「いますぐ着たい」と思えるような洋服を提案するファッションフェスタだ。ランウェイのショー以外にも、アーティストのライブが開催されたり、展示ブースで商品に実際に触れて試すことができたりするなど、さまざまなコンテンツを楽しめるイベントになっている。

 近年では、全国各地でTGCを開催する「TGC地方創生プロジェクト」もスタートした。

 過去に、ショーでモデルが着用した福井県鯖江市のめがねは、このイベントで注目を浴びて以降、テレビや雑誌などの取材が相次ぎ「めがねのまちさばえ」という認知を急速に高めた。TGCとともに限定フレーバーを開発した、広島県三原市に本店を構える八天堂の「くりーむパン」は、TGC広島2017の会場ブースで用意した2000個が即完売した。

 そんな、TGCが2022年10月22日(土)、山梨県にやって来る。

あまりにまぶしい存在

 東京ガールズコレクションが山梨県で開催されるらしい。それを聞いた瞬間、青春時代の甘酸っぱい1コマが私(筆者)の頭をよぎった。

 TGCのはじまりは2005年に遡る。その頃はYouTubeもなく、初めて映像を見たのはテレビで、私は大阪に住む高校生だった。栗色の髪をふわふわと巻き、弾けるような笑顔でランウェイを歩くモデルの姿に、釘付けになったことをよく覚えている。

 開催を重ねるごとに勢いは加速していた。

 TGCでは、モデルが身に付けている服をスマートフォン(当時は携帯電話)などからその場で購入できるのが特徴のひとつだ。

 しかし女子高生の身では、何千円もの服をぽんぽん買うわけにもいかない。だから、時にTGCは羨望や嫉妬の対象となることもあった。開催直後、何着も買った同級生の噂は瞬く間に学校中に広まった。TGCという存在は、女子高生たちにとってはあまりにもまぶしかった……。

 その東京ガールズコレクションが山梨で開催される。すでに公式HPでは、yamaやなごみ、Girls2、中町兄妹、鈴木鈴木といった人気者たちが出演することが発表されている。どんな経緯で山梨で開催されることになったのだろう。開催を発表する記者会見の場に向かった。

ガールズパワーで既存産業に新たな光を!

「山梨県には、フルーツ、ワインや日本酒などの美酒、匠の技による織物・ジュエリーなど、魅力的なものがたくさんある。TGCが持つ情報発信力や企画力などを活かし、それらに新しい角度から光をあてることで、若い人たちからもっと注目してもらいたい。山梨県を知ってもらい、山梨に出かけたいと思ってもらえるようになればと思っています」

 記者会見で、長崎幸太郎知事は力強く語った。

 世界文化遺産の富士山に河口湖を含む富士五湖。南アルプスや八ヶ岳といった日本を代表する名峰に囲まれ、桃の花に紅葉、ラベンダーなど、山梨県は四季折々に異なる表情を見せる。

 シャインマスカットやワインなどの特産品も豊富だ。伝統織物「甲斐絹」や、金峰山を中心に、その地域から産出する水晶がきっかけとなってジュエリー産業も発展を遂げてきた。

 ところが、近年は若年層、とりわけ若い女性の人口流出が顕著だという。2019年のデータでは、県人口約81万人に対して県外への転出超過数は2353人。その約9割は就職期(20~24歳)の若者が占める。この6割近い1173人が女性だった。

 世代別でみた山梨県の転入者と転出者(総務省の「住民基本台帳人口移動報告2019」から山梨県が作成)

「若い方は『山梨県のいいところは?』と聞かれた際、『特にない』と答えることが多いと言われています。このイベントをきっかけに県内のあらゆる素材を磨き上げて、新たな価値を持ち消費者に選ばれる商品に育てていきたい。さらに、それぞれの商品を組み合わせて山梨の魅力とブランド価値の向上につなげていきたいと思っています」(長崎知事)

富士山バックに初の「野外フェス」

 イベントのテーマは「Treasure Box(宝箱)」。たくさんの魅力がつまった山梨県を宝箱に見立て、当日はたくさんの仕掛けが用意されている。

 TGCは「日本のガールズカルチャーを世界へ」をテーマに、2005年8月から現在に至るまで、年に2回開催されている。

 若者からの絶大な支持を受け、東京近郊で定期開催するほか、2015年からは全国各地でTGCを行う「TGC地方創生プロジェクト」もスタートした。都心部と地方の「体験格差」をなくすことが目的だという。

 その結果、これまで福岡県、広島県、静岡県、富山県、熊本県でもファッションショーやアーティストライブを行い、数々の成功を収めてきた。

 今回、山梨県の豊かな自然を生かし、TGC地方創生プロジェクトの中で初めての「野外フェス」という形態をとる。イベントタイトルは『TGC FES YAMANASHI 2022』。

 世界文化遺産「富士山」をバックに、メインエリアの「河口湖ステラシアター」では人気モデルによるファッションショーが実施される。また、グリーンエリアの「河口湖総合公園」は、チケットがなくても自由に出入りができ、エリア内では山梨県のグルメなどさまざまなコンテンツが提供される。

 長崎知事はこう話す。

「“山梨の宝”をギュッと詰め込んだフェスとなるので、ぜひとも山梨に足を運んでいただき、山梨の魅力を存分に感じてほしい」

W TOKYO代表取締役の村上範義さん

アパレル以外の分野でも地域のパワーを

 TGCを企画・制作するW TOKYO代表取締役社長の村上範義さんは、今回のフェスに向けて意気込みをこう語った。

「イベントを開催すると、来場者、オンライン視聴者を合わせた1日の総体感人数は約800万人、SNSでの拡散数はおよそ18億impという、とてつもないエネルギーになります。このパワーを、アパレルの分野のみに活用するのではなく、地域の魅力や財産を発信するコンテンツに転化していきたい。山梨県を宝箱に見立て、あふれ出る山梨県の魅力や財産を全国に発信していきたい」

 村上さんは、TGCとしては初の試みとなる「野外フェス」開催についてこう語る。

「山梨の魅力の一つは大自然であること。山梨に来たことがない人に初の山梨体験をしてもらうのに、絶好の会場だと思い、ステラシアターで開催されることになりました」

 一方、山梨県でTGCを開催するにあたり、「ガールズコレクション」という名称から「特定の性別をカテゴライズするのは時代錯誤ではないか」という意見もあったという。

「山梨県は若い女性の人口流出が課題だとうかがいました。そのため、その女性をターゲットにしたイベントが開催されるのは、自然なことだと思います。『男性』『女性』という言葉が成り立たないのなら、デパートのメンズフロアや、男性ファッション誌『メンズノンノ』もダメだということになってしまいますよね」(村上さん)

「差別は当然許されるものではありません。ただ、いつの時代でも、いわゆる『ボーイッシュな服が好き』『ワンピースを着たい』など、自分の『好み』を洋服で表現するのは、すべての人に認められる権利だと思います」(長崎知事)

山梨が生まれ変わるきっかけに

 都心部と地方の「体験格差」をなくすことを目的に始まった「TGC地方創生プロジェクト」はもともと、各地域の魅力を若い人たちに魅力的だと感じさせるコンテンツにし、全国に発信してきた。

「フルーツの美味しさや、織物・ジュエリーの技術を、若い人たち自らがSNSで発信していくようなコンテンツにするには、ひと工夫が必要で、この点が私たちの得意なところです。たとえばブドウやモモなどのフルーツそのものをSNSで発信する人はそれほど多くありませんよね。でも、人気のパティシエがそのフルーツを使ったスイーツにして“コンテンツ化”することで、そのスイーツを食べた人が『自分がいま時代の最先端にいる』と受け止めれば、自分の人生の1ページとしてSNSで発信していく。自分のフォロワーに対して、TGCフェス山梨2022のコンテンツを『自分のコンテンツ』として発信していけるような仕掛けをたくさん入れていきたいと思っています」

 村上さんはそう話し、いま山梨県内でPRしたいものなどをヒアリングし、県庁や県内企業と連携を深めているという。

 一方で、こうしたイベントは一過性に終わることも多い。だが、長崎知事はTGCフェス山梨2022を「山梨県が生まれ変わるきっかけにしたい」と期待している。

「山梨県の素材は良いものだが、若い人たちから見ると『カッコ悪い』という面もあったのかもしれない。でも、フェスをきっかけに県内のあらゆる素材が若い人たちに受け入れられるものに変化していくという“プロセス自体”に大きな価値があると思っている。ちょっとひと工夫、ひと手間加えることで、県内の素材は若い人たちに刺さるコンテンツになるのではないかと思う。今回の取り組みを通じて、あらゆる人がアイデアを出し合い、山梨が生まれ変わる動きになってくれたらうれしい」(長崎知事)

気になるイベントの内容は…

イベントの準備に携わるW TOKYOの淺川万葉さん

 東京ガールズコレクション実行委員会の淺川万葉さんは、TGCの山梨県開催に向けて奔走してきた一人だ。

「過去にTGCのイベントに参加したことがある方も、大自然の中で行われるフェスは『今までとは違う』と感じてもらえると思います」

 実は、淺川さんは山梨県出身。大学では地方創生について学び、2019年にW TOKYOに入社した。山梨県で開催が決まった際、地元の友人たちからは「楽しみ」といった声のほか、「本当によかったね」「絶対に成功させて」など、激励のメッセージが相次いで届いた。

「知られていないだけで、各地域には魅力がたくさんあります。そんな地域それぞれの『色』を打ち出すことで、毎回、お祭りのような唯一無二のイベントが出来上がるんです」

 山梨県のフルーツやテキスタイル、ジュエリーを使ってどのような商品が生まれるのだろう。淺川さんに尋ねると「ひみつ」との回答だった。もう一度食い下がると、淺川さんは困った笑顔を浮かべながらも、こう話してくれた。

「TGCは、より来場者の方に楽しんでいただくためサプライズ感を大切にしているので、開催前に情報をお出ししていないんです。けれども、きっといいものに仕上がると感じています。山梨県の方はもちろん、県外からお越しになる方も、どうぞ期待していてください!」

 県内の各事業者は、TGCイベントに向けて「かつてないとっておきの逸品づくり」を始めているという。

文:土橋水菜子、写真:小山幸佑

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